アルコール依存症とは

アルコール依存症は、飲酒のコントロールが効かなくなる慢性進行性の疾患であり、誰にでも起こり得る生活習慣病の一つです。特に真面目で几帳面、神経質で他人に弱音を吐けない性格の人がかかりやすいといわれています。自分の意思だけで飲酒を止めることは難しく、専門的なサポートが不可欠です。
長年の飲酒により脳の”アルコールに対するブレーキ”が機能しなくなり、飲酒のコントロールができなくなります。また、禁酒しようとしても強い飲酒欲求や離脱症状（不安、不眠、手指の震えなど）が現れることがあります。

一般的には「毎日大量に飲む人」「お酒にだらしない人」「酒癖が悪い人」といったイメージが持たれがちですが、実際には次のようなサインが見られることもあります。

• ストレス解消や眠るための飲酒が増える
• 飲酒後の記憶が途切れることが多くなる
• 飲酒翌日に気力や意欲が湧かなくなる
• お酒を飲んでいない時に、汗をかく、眠れない、手が震えるといった症状が出る

以下の項目で3つ以上当てはまる場合は、アルコール依存症の可能性があります。

• 夕方になると強い飲酒欲求が湧いたり、「良くない」と分かっていても飲みたくなる
• 飲み始めると時間や量をコントロールできない
• お酒を減らしたりやめようとすると、手の震えや汗、不眠などの症状が出る
• お酒に対する耐性がつき、以前の量では酔えず、飲む量が増えてしまう
• お酒を飲む時間が増え、他の趣味や楽しみが減ってしまう
• 健康や仕事、人間関係への影響が分かっていても飲み続けてしまう

アルコール依存症は「意志が弱い」から起こるものではありません。早めに気づき、適切なサポートを受けることで、回復への道を歩むことができます。

アルコール依存症の原因・要因

アルコール依存症は多くの要因が複雑に絡み合って発症するため、単一の原因を特定することはできません。しかし、以下のような危険因子が発症リスクを高めることが知られています。

• 飲酒を始める年齢が若いこと
• 妊娠中に母親が頻繁にアルコールを摂取していること
• アルコール依存症の親を持つこと
• うつ病や不安障害、注意欠陥多動性障害（ADHD）など、他の精神的な問題を抱えていること
• 若い時からの過度な飲酒に対して周囲が寛容な価値観を持っていること

これらの要因を全て満たしても必ずしもアルコール依存症を発症するわけではありませんが、そのリスクは高まるとされています。

アルコール依存症が引き起こす影響

• 心への影響：不眠症やうつ病、幻覚、妄想、アルコール性認知症など深刻な精神症状を引き起こすことがあります。
• 身体への影響：肝硬変、膵炎、高血圧、がん、心筋症など、さまざまな病気の原因となります。
• 家庭への影響：家庭内暴力（DV）や子どもへの虐待、家庭崩壊のリスクが高まります。
• 仕事への影響：遅刻や欠勤、失職、経済的困窮を引き起こします。
• 社会への影響：飲酒運転やトラブルの原因となり、他者にまで深刻な被害を与えることがあります。

アルコール依存症は早期発見と適切なサポートが重要です。自分だけで抱え込まず、専門機関へ相談することが回復への第一歩です。

治療方法・プログラム

アルコール依存症からの回復には、断酒を継続することが必要です。しかし、一人で継続するのは困難であり、専門医療機関のサポートや自助グループ、断酒補助剤の服用などが重要です。各プログラムへの参加をご希望の方は、主治医へご相談ください。